原始仏教ガール’s日記

気づけばすっかり仏教徒。 twitter @music_buddha

看取り医の大井玄先生からあふれる慈悲の心、そしてティク・ナット・ハン師の教え

2014年11月11日(火)から13日(木)の3日間、霞ヶ関のイイノホールにて「ASIAN AGING SUMMIT(アジアンエイジングサミット)」が行なわれました。

 

このサミットは、到来する超高齢化社会を前に、課題を洗い、問題解決をするべく討議を深めるというもので、2011年に始まり今年で4回目を迎えました。

 

今年は「予防医療」、「ロボットの活用」など、様々な分野からのご発表がありましたが、「死生観、終末期医療、国民教育」というセッションでの、臨床医の大井玄先生のご発表がたいへん印象深いものでした。

 

大井玄先生は1935年生まれの78歳、現在は東京大学名誉教授、都立松沢病院医師として、現役で臨床医として終末期医療全般にかかわっているお医者さんです。

 

大井先生いわく「寝たきりになった高齢者は、世界とのつながり、家族や友だちとのつながりを失うことに不安を感じている。しかし、認知症、寝たきりになってしまうと、本人からは世界に対して「つながろう」と働きかけることはできなくなってしまう。だから、まわりからはたらきかけ、つながりの感覚を取り戻してあげることが大事なのですよ」ということでした。

 

「つながりの感覚」をご説明されるときに、ティク・ナット・ハン師の「紙一枚からつながりを見るお話」を引用されていらっしゃいました。

 

一枚の紙を見て、そこには木があったことを知る、木が育つためには太陽と大地があったことを知る。木を切るには木こりがいたことを知り、木こりが木を切りにいくときに持って行ったお弁当から、食べ物を育てた人を知る。このように一枚の紙だけを見ても、たくさんのつながりが感じられる、というお話です。

 

自分の身近にあるものが世界とつながっているということを実感すると、それだけでも、自分の中にほわっとしたあたたかい気持ちが生まれるのを感じます。

 

ティク・ナット・ハン師のメッセージに象徴される「世界とのつながり」を大井先生が臨床の現場で実際に取り入れるときには、言語的な説明ではなく、五感で感じること、感覚的なことをとても大事にしていらっしゃるのだそうです。

 

例えばお母さんパンダが小さな子パンダを舐めて育てるような感覚だったり、お母さんカンガルーが子カンガルーをあたたかいポケットの中で大事に育てるような感覚だったり、そんな感覚で、優しく患者さんに触れる、できるだけ優しく声をかける。病床にある人に対して、五感を通して、あたたかく、つながりを感じられるように接する。ティク・ナット・ハン師のメッセージを、そのように臨床現場では応用しながら、取り組んでいるとのこと。

 

病床にある人が、まわりから優しくされ、世界とのつながりを感じることは、その人が一生かけて作ってきた「自分の意味」を、死の間際に感じることにもつながるのだそうです。結果、看取る人も「これなら死ぬのも悪くない」と学ぶ、ということをおっしゃっていました。

 

大井先生は「わたしが看取った人はみんな大往生なんですよ」と笑顔で語っていましたが、こんな慈悲にあふれた先生に最期、立ち会っていただき、世界とのつながりを感じながら死ぬのであれば、本当に幸せに息を引き取れそうだと思えました。

 

大井先生は壇上でお話されているときの笑顔が実に優しそうで、お話を伺っているだけで、自分の心が凪いで穏やかになった気がしました。

 

なんでも受け入れてくれそうな深い懐をもった、お坊さんのようなお医者さん。そんな印象だった大井先生。その後、この大井先生のことをちょっと調べてみたら、禅の修行もされたことのあるかたのようでした。ご本人がブログの中でお書きになっていました。

http://www.fuanclinic.com/ooi_h/ooi_q64.htm

 

大井先生と仏教との接点、ティク・ナット・ハン師の教えに触れたきっかけなど、気になることがたくさんあるので、どこかの雑誌などでインタビューがあったら、ぜひ読んでみたいと思いました。

 

最近お出しになった 『病から詩が生まれる 看取り医がみた幸せと悲哀』(朝日選書)もこれから読もうと思っています。