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原始仏教ガール’s日記

気づけばすっかり仏教徒。 twitter @music_buddha

【ブックレビュー】『脳と瞑想』から考える、瞑想のポジティブな副作用

プラユキ・ナラテボーさんと篠浦伸禎さんの対談による『脳と瞑想』という本を読みました。

 

プラユキさんの本は前から好きなのですが、この本は脳外科医との対談ということで、なんだか難しそう・・・としばらく敬遠していました。が、読んでみたら、まあ!びっくり。今の自分の興味とシンクロするところが多く、メモしておきたいことがいっぱいでした。

 

プラユキ・ナラテボーさんについてはこのブログでも何度かご紹介していますが、タイの森林僧院で副住職をされているテーラワーダのお坊さんです。一方の篠浦伸禎さんは都立駒込病院脳神経外科部長の肩書きを持つ、脳神経外科医のお医者さん。全身麻酔をせずに(!)脳外科手術をすることで日本トップクラスの実績を誇り、ご活躍なさっている方とのこと。このおふたりが、脳と瞑想というテーマで縦横無尽にトークをしています。

 

自分を含め、テーラワーダ仏教徒が瞑想をする目的は智慧の開発、そして解脱ですが、解脱を目指す修行をしていく過程で、様々なポジティブ副作用が生まれてくることは、瞑想修行者であれば誰もが実感していることだと思います。わたし自身も瞑想を実践することによって物ごとへの執着が弱まり、旅の途中にいるかのような自由な気分で過ごすことができていたり、何か優先順位をつけなければいけないときに即断即決できるようになったりなど、様々な効果を実感しています。

 

この本の中でもいろいろなお話が出てきますが、中でも瞑想とアイディアの関係性についてのお話には、かなり興味を惹かれました。瞑想をすることにより、頭で「考える」ことをお休みすると、その後、アイディアが出始めること。瞑想をやっている瞬間にアイディアが出てくることもあるし、普段でも出やすくなった、などのお話を篠浦さんはされ、プラユキさんはそれを肯定しています。知的に理解が深まって心に明晰さが生まれると、さらに直感レベルでも「はっ」とインスピレーションがわき上がってきますね、と。

 

最近、ヴィパッサナー瞑想に熱心に取り組んでいるアーティストの方とお話する機会があったのですが、その方々も、瞑想に取り組んだ直後は脳が明晰な状態になり、新しいアイディアがどんどんわいてくる、今は作品作りのためにも瞑想が欠かせないものとなっている、ということをおっしゃっていました。その話を聞いていたこともあり「瞑想とアイディア」「マインドフルネスとインスピレーション」といったあたりはこの本でも興味をひかれましたし、今後、自分としてはさらに興味を深めていきたいところかなと思っています。

 

ちなみに、ちょうど今月号のパティパダーで、スマナサーラ長老が、

仏教は俗人のためにできあがったサービス・ステーションではない。智慧を開発するのが目的。サービスに足を取られると大損。仏道を実践すると、現世利益は当たり前のこと。しかし私たちは現世利益に足を取られることなく、先へ先へと進まなくてはならない。

と、瞑想の効果に執着してはいけない、ということをおっしゃっています。それは理解できる一方、修行者が瞑想の優れた効果を日常的に感じられれば、瞑想をすること自体が苦ではなくなり、瞑想実践も安定的に実践できるメリットもあるでしょう。効果には執着せず、しかしよいことと捉え、瞑想に取り組んでいきたいものだと思いました。

 

そのほか『脳と瞑想』で、覚えておきたいところとしては、

瞑想におけるリトリートもそうですが、それはあくまでも「一時的」な訓練の場であり、そこで得た知見を自らの置かれている現場でどう生かしていけるかが大事であるという認識が必要でしょう。それがないと、「スピリチュアル・アディクション」なんて言葉もありますが、セミナーや道場のような場でしか自分らしく生きられないなんて本末転倒なことにもなってしまいかねないですからね。

というプラユキさんの発言。そのとおりだなと思いました。

 

そのほか、「マズローは晩年、5段階欲求のさらに先に「自己超越の欲求」があることを唱えていた」といったことや、小池龍之介さんがプラユキさんのタイのお寺で2〜3週間瞑想修行をされていたことなどもトークの中に出てきており、いろいろと発見の多い本でした。

 

脳外科手術の最前線に触れながら(その話もたいへん面白いのですが)、瞑想についても学べる珍しい本。意外とさらっと読めて、内容も充実! 面白かったです。