原始仏教ガール’s日記

気づけばすっかり仏教徒。 twitter @music_buddha

初期仏教と認知行動療法に興味がある人にオススメ!「マインドフルネスそしてACTへ」

早稲田大学教授の熊野宏昭先生の本「マインドフルネスそしてACT*1へ」を読みました。熊野先生は医師であり認知行動療法の専門家。2012年にNHKの番組にも出演されていたので*2、お顔を見たことのあるかたもいらっしゃるかもしれません。

 

読んでびっくり!

この本、読んでびっくりしました。先生は認知行動療法がご専門なので精神医療寄りの本かと思いきや、ほとんどこれって初期仏教では??という内容。スマナサーラ長老のお話や初期仏教を学んでいる人であれば、とても納得できる内容です。西洋心理学や認知行動療法にも興味があり、双方のアプローチをざっくり知りたい人には本当にオススメ。

 

本の内容を一言で言うと

認知行動療法の最前線でやろうとしていることも、2600年前のブッダの教えも、やろうとしていることは同じなのですよ、という内容でした。ブッダはすごい・・・!

 

ポイントをいくつか抜粋します。

 

マインドフルネスとは
・「マインドフルネス」とは、元々はパーリ語の「サティ」という言葉の英訳で、日本語では「気づき」、漢語では「念」と訳されています。
・「マインドフルネス」を端的に説明すると、「今の瞬間の現実に常に気づきを向け、その現実をあるがままに近くし、それに対する思考や感情にはとらわれないでいる心の持ち方、存在の在り様」ということになります。

  

むしろ日本は遅れている!グローバル化とマインドフルネス
・世界のグローバル化に伴い、過去半世紀ほどの間にインドのヨーガ、日本や韓国の禅、チベット仏教、東南アジアのテーラワーダ仏教(初期仏教9などが欧米各地に紹介され、非常に広く実践されるようになったという経緯があります。60年代から70年代にかけてのヒッピーや精神世界ブームの際などには、これらに関心を持つ人たちは多少とも現実社会から遊離する傾向があったようですが、現在ではあちこちにヨーガ、禅、瞑想などのセンターが設置され、多くの人々の生活にとけ込んでいるようです。それに比べると、日本の状況はむしろ大変遅れていると言ってよいと思います。
 
マインドフルネス(ヴィパッサナー瞑想)で脳が開発されることが科学的に実証された
 ・マインドフルネス瞑想の実践を10年、15年と続けていくと、大変興味深い変化が脳に起こってくることが、2005年にアメリカのサラ・レイザーによって報告されました。それは、脳の限られた領域の容積が増大したというものです。
・厚みを増していた背内側前頭前野という部位は、自分や他人の思考や感情の動きを対象化して(「メタレベルで」といいます)理解する能力に関わっているのです。
 
マインドフルネス(ヴィパッサナー瞑想)の効用
 ・マインドフルネスストレス低減法は、慢性疼痛、癌、心臓病、うつ病、不安障害などさまざまな心身の病気に対して大きな効果を上げています。個々の病気の原因を突き止めた上で、それに対して治療を行う西洋医学のモデルからすると、さまざまな病気に対して同様なプログラムが治療効果を挙げるということ自体が、大変興味深いものです。 
 
マインドレス(気づきを持てないこと)の副作用
・「マインドレス」な(気づきを持てない)心がいろいろな問題を生み出します。この「マインドレス」な心の弊害には、思考やそれを生み出す言葉の働きが深く関わっていることを指摘してきました。現実は常に変わり続けているので、仮に言葉にした時にはかなり正確に表現できていたとしても、あっという間に現実からずれていってしまい、次々に問題を生み出していくことになってしまいます。われわれの毎日の社会生活は、思考や言葉を中心に営まれています。そうなると、われわれは今述べてきたようなネガティブな影響を常に受けながら暮らしているということになります。

 

言葉を音として認識する 

・不快な言葉は、体験の回避とフュージョンによって行動を強く抑制する機能を持つ可能性が高いのですが、その言葉が意味のない音として体験されるような非日常的な文脈が一度でも提供されると、言葉の持つバーチャルな現実を作り出すという刺激機能から、普段の生活の中でも抜け出しやすくなるということです。
・ACTでは、最初に、脱フュージョン*3、アクセプタンス、プロセスとしての自己や場としての自己の強化といったさまざまな介入を行い、お言葉が持つ「毒」を取り除いていくことになります。 
 
ACTもヴィパッサナーも目指すところは同じ
・2600年の歴史を持つマインドフルネス瞑想を通っても、最先端の認知行動両方であるACTを通っても、言葉や思考の世界から距離を取るという共通の地点にたどり着くことが見えてきました。 
 
読んで思ったこと
初期仏教がこれからの社会で一般の人の生活に対してどう活きていくのか。そのヒントがたくさんありました。医者から見れば病気になる前の人であっても初期仏教から見ればすべての人は病気。普通に日常生活を送っている人(自分も含めて)に対するアプローチとして、ヴィパッサナーが役に立つ。ぐるっと一周してそこに戻るというか、ここから何かいろいろなことが考えられそうだと思いました。
 
そういえば、以前熊野先生のセミナーに参加した際に先生がおっしゃっていたのですが、先生は東大の医学部の教授戦に負けたときに「もう自分には価値がない、自分は終わりだ」と思ったそうです。怒りや後悔、迷いなどの強い感情に振り回されて、本気で生きるのが辛く、そのときに救いを求めてヴィパッサナー瞑想を実践したのだとか。
 
自分の中で作り上げた「物語」に縛られた経験を通して、先生ご自身も自分の心を他人事のように眺めるヴィパッサナー瞑想の効用を感じているようです。仏教徒ではないようですけどね。
私にとっては、マインドフルネス=生きることで、それ以上でも以下でもないようです。そして「思いを手放す」生き方の効用を伝えているのですが、それを信仰と呼ぶかどうかは分かりません。 

 

ということで、さらっと読めるのに内容が濃いというとてもよい本でした。秋の夜長にぴったり。オススメです!

*1:アクセプタンス&コミットメント・セラピー

*2:http://www1.nhk.or.jp/asaichi/2012/01/25/01.html

*3:思っていることと事実が違うということを体験すればするほど気持ちが軽くなること